皆さんの中には「ゲーム理論」といった言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
ゲーム理論とは人々の動きや考え方をゲーム的に捉え、それぞれのプレイヤーの行動を分析したり、予想したりするための考え方です。
現代社会のビジネスの場で活用する事例も増えてきており、この考え方は有益だと考えられています。
なぜなら、どのように行動するのが最適なのかといった戦略的思考が身につくとされているからです。
本記事では、そんなゲーム理論のをわかりやすく解説できればと思います。
ゲーム理論とは
複数の意思決定主体が存在する状況における意思決定の理論です。
ゲーム理論の基本的な考え方は、ある主体が意思決定をする際に、ほかの主体が自分の行動にどう対応してくるかを予測したうえで、自分にとって有利となる行動を決定するです。
簡単に言うと、
人が複数人集まると利害関係が生じます。
その際に、自分が一番有利(有益)になるような合理的意思決定を考えるということです。
人によって考え方が違うことで、個々が自分の利益だけを考えた選択をすると、結果的に自分自身の損をしてしまうこともあります。
そのため、皆の満足が最大になる選択を導き出すための理論ともいえるでしょう。
ゲーム理論の様子はチェスや囲碁といった、プレイヤー同士が次の手を読みあうことと似ているといえます。
ゲーム理論が用いられる状況とは
ゲーム理論は、結果が他の意思決定の選択に依存するといった「ゲーム的状況」に用いられます。
例えば、150円の同じ商品を売る2つのA店とB店があり、その商品の値段を140円にしようか、今日中に決めようと考えているとします。
お互いライバル企業ですので、両方とも敵視しあっています。
また、たとえ話ですので、売り上げの下がり方に疑問に思うかもしれませんが、気にしないでください。
この時、2つのお店がその商品を150円のまま、売るとしたら、両方とも今まで通り40万円の売り上げのままとなるとします。
ですが、A店が150円のままで、B店が140円にした場合、A店の売り上げが10万円になり、B店の売り上げは50万円になります。
しかし、両方のお店が140円に値下げをしたとき、お互いの売り上げは30万円になってしまいます。
こういった、モノを売る立場からして、値段を下げたことは商品の利益が減ることにつながります。
それでも、他社を意識して、他社よりの自社の売り上げが高いほうがいいと考えて、結局お互いに商品の値段を下げると考えられます。
そうした場合、もともとの40万円の売り上げから30万円の売り上げになってしまうということになります。
こうなると、長い間その下がった売り上げですので、結果的にお店の売り上げが見込めないという状態になってしまうことがあるのです。
こういった状況を「ゲーム的状況」と呼び、例えのような状況を分析し、予想することが「ゲーム理論」なのです。
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ナッシュ均衡とは
上記の例えは「非協力ゲーム」と呼ばれ、お互いの敵視しているため、コミュニケーションをとらずに、意思疎通も図りません。
その環境下でどれだけ相手よりも、自分のみの利益を選ぼうとするゲーム的状況でした。
この例えの場合では、A店とB店が両方とも商品の値段を「140円に下げる」と考えられます。
というのも、目先の勝負に囚われて、お互い損をしないようにするからです。
お互いの主体(プレイヤー)が選べる選択を「戦略」と呼びます。
その戦略では、商品を「150円のままにする」と「140円に下げる」の2つがあります。
先ほどの例えを戦略ごとの結果を表にしたのが下記のです。
A店\B店 | 150円のままにする | 140円に下げる |
150円のままにする | 40万 40万 | 10万 50万 |
140円に下げる | 50万 10万 | 30万 30万 |
商品の値段を下げることで、イレギュラーのケースを除いて、お店の売り上げが減ることは理解できると思います。
なので、良い選択としてはお互いが商品の値段を「150円のままにする」がよいと考えられます。
ですが、お互い敵視しているため、150円のままにしておこうといった考えの照らし合わせはできないわけです。
そして、好ましくないパターンは相手が下げて、自分はそのままの時です。
大きく売り上げを下げることになってしまうと考えるからです。
それであれば、相手がどっちの選択をしようが、値段を下げるほうが、もしかしたら売り上げが上がるかもしれないし、大損することもないので選択したいと考えるわけです。
このようにお互いの戦略を前提に、双方のプレイヤーが最適な戦略している状態を「ナッシュ均衡」といい、ゲーム理論の基本的な均衡概念となります。
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ゲーム理論で代表的な「囚人のジレンマ」とは
ゲーム理論で有名な話で「囚人のジレンマ」があります。
この章のお話も、「非協力ゲーム」のお話です。
このお話を簡単にすると、
お互いに協力しあえば、双方に利益がある取引を持ちかけられます。
ですが、自分が損することを恐れ、お互いが裏切りあって、結局は損をしてしまうというお話です。
では、さっそく「囚人のジレンマ」について、詳しく説明をしていきます。
強盗の罪を犯したというAとBの2人の男が警察で取り締まりを受けています。
2人の男が軽い窃盗をしたことはわかっています。
ですが、肝心の大きな強盗を犯したが、手口や証拠が出てこない状況でした。
そこで、2人の男を別々に取り調べをしています。
ですが、なかなか大きな強盗について自白しないため、警察は次のような取引をAとBに持ち掛けます。
2人とも「黙秘」なら、それぞれ懲役2年
2人とも「自白」なら、それぞれ懲役10年
1人が「黙秘」、1人が「自白」なら、黙秘は懲役15年、自白が懲役1年
2人とも黙秘を続けるのであれば、証拠が出ないので懲役2年で軽い罰となります。
そして、2人とも犯行を認めてしまったら、懲役10年というそれだけの罰を受けることになります。
ですが、1人だけ自白したのであれば、それは認める気持ちから罰を軽くしてあげようということで懲罰1年します。
その代わり、黙秘のほうは嘘をついたのですから、15年の長い懲役になります。
この場合、AとBは黙秘をしたほうがよいでしょうか、それとも自白をしたほうがよいでしょうかという状況を考える話です。
ここで重要なポイントが、2人の男は「できるだけ刑を短くしたい」と考えています。
そして、「相手の行動が読めない」ということです。
このように、非協力ゲームで分析をするケースとなります。
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「囚人のジレンマ」ではどう選択するべきか
ここでは、「囚人のジレンマ」での最適な選択なのか考えてみます。
下記が警察からの取引内容をAとBが選択した場合の表です。
A\B | 黙秘 | 自白 |
黙秘 | 2年 2年 | 15年 1年 |
自白 | 1年 15年 | 10年 10年 |
例えば、あなたがAだとします。
その場合、どう考えるでしょうか?
きっと自白をすることが望ましいと考えてしまうのではないでしょうか。
自白をするほうが、懲役が短くなるか、Bが自白をしても、黙秘を続けるよりは自白をしていたほうが懲役が短くできるからです。
この前提として、お互いに黙秘をすれば、2年で済むということは分かっています。
ですが、相手の裏切るか分からない以上、自白を選んだほうがマシに感じるのです。
このような選択(非協力、非協力)することもナッシュ均衡になっているといえます。
このように、それぞれの容疑者が、自分に都合の良い選択をしてしまい、もっと良い選択があるにも関わらず、結局はそれを逃し、長い懲役に処されたというお話でした。
そこに容疑者の間の、ジレンマ(板挟み)があることから、「囚人のジレンマ」と名づけられました。
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