寡占市場とは ~カルテルなど寡占企業の関係性を分かりやすく解説

経済学

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寡占市場と複占市場とは

 

寡占市場とはある産業の財・サービスに対して、ごく少数の企業に限定されて供給されている市場のことです。

 

それにより、それぞれの企業がある程度の支配力を持ち、ほかの企業の行動に影響される状態のことを言います。

 

例えば、自動車産業のような、日産、ホンダ、トヨタ、マツダなどの大手自動車メーカーが大きく占めている市場を指します。

 

 

その寡占の中でも、市場を占める企業の数が2つに限定される市場を複占市場といいます。

 

これは、一眼レフカメラを扱う市場のような、キャノンとニコンが大きく占めていますよね。

 

このように、自動車産業といった少数の企業が占めている市場を寡占市場といい、一眼レフカメラ市場のように2つの企業が大きく占める市場を複占市場と呼ばれます。

 

 

寡占企業は設定した価格に従う立場の企業(プライステーカー)ではないので、価格は自らが設定します。

 

そのため、ライバル企業の行動や価格設定によって、売り上げに影響が生じます。

 

 

同質材と差別財とは

 

寡占市場で取引される財には「同質材」と「差別財」の2つがあります。

 

「同質材」とは作り手が変わっても品質が変わらない財のことです。

 

同質材は市場の中で品質は変わらないということなので、財の価格だけに依存します。

 

というのも、皆さんも質が変わらない商品の場合、安いほうを買いますよね。

 

このように、競争相手である他社の価格設定によって、直接的に影響を受けるのが同質材です。

 

これに対して、「差別財」は同質材の逆で作り手によって品質が変わる財のことです。

 

差別財は価格だけでなく、作り手によって購入するか消費者は判断します。

 

そのため、売る側からしてみれば、価格以外の要因を考慮される差別財の価格は、ある程度自由に設定することができます。

 

そして、同質材は企業相手に、差別財は消費者に対して販売する財に多くみられる傾向があります。

 

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カルテルとは

 

寡占市場では、少数の企業が価格支配力があるとお話しました。

 

その価格支配力を持った企業間で話し合い価格設定を行うことをカルテルといいます。

 

このカルテルよって多くみられるのが、財の価格を高く設定し、横並びにすることがあります。

 

これをされると、消費者はしぶしぶ高い値段で購入をしなければならなくなりますよね。

 

また、商品の価値を高めるために生産量を抑えて、意図的に高い価値を維持しようとする試みが当てはまります。

 

市場に出回る数が少なければ、その間の商品の価値は「少ないから貴重」といった考えから、価格が高くても不思議に思わないわけです。

 

 

このようにカルテルが形成されてしまうと、高い価格で購入せざるを得ない状況が作られるのです。

 

カルテルが徹底して行われ、寡占企業同士で手を結び、財の価格(高く設定)や生産量(少なく)を決めることができれば、その市場にある寡占企業がすべて合併した時と同じ利潤を得られるようになります。

 

それによって得られた利益をすべての寡占企業で山分けをすれば、企業はバラバラだった時よりも多く安定した収益を上げることができるのです。

 

つまり、独占市場の独占企業と同じになるということです。

 

 

これにより、商品のを購入した時の社会全体の効用(満足感)が大きく減少することに繋がります。

 

ですので、こうした弊害が大きいことから「独占禁止法」といった法律で禁止されている行為となっています。

 

そんな独占禁止法は企業間の競争の制限や事業活動の不当な拘束などを禁止する法律です。

 

カルテルが成立するとは限らない

 

カルテルができてしまえば、寡占企業側は大きな収益を上げることができるが、消費者は困ってしまうということでした。

 

ですが、そんなカルテルですが、実際にはうまくいかないこともあります。

 

なぜなら、カルテルで形成されたことで、一律の高い価格で販売していますが、ある企業が抜け出して安く商品を販売しだしたらどうでしょうか?

 

今までその値段に不満を持っていた消費者たちが、その安い価格のほうの商品を優先して購入すると思いませんか?

 

こういった誘惑によって、カルテルが成立しないこともあるのです。

 

このようにカルテルが法律で禁止されている以上、裁くことができないので強制力を持たせるのは難しいということになります。

 

 

この場合であれば、カルテルを形成した企業間で生産量や価格を変更することで対策が取れてしまいます。

 

そうなれば、抜け出した企業の利益は、結果的に今までより小さくなってしまうと考えられます。

 

 

これの状況はゲーム理論の囚人のジレンマと全く同じ状況になってしまったということになります。

 

非協力を選択することで、個人の利益はあげられることができると考えるのはあたりまえです。

 

となると、カルテルから抜ける企業も多くなると考えられます。

 

ですが、現状ではそんなことはなく、あらゆる場所でカルテルが形成されています。

 

 

囚人のジレンマが気になる方は『ゲーム理論とは ~ナッシュ均衡と囚人のジレンマを分かりやすく解説』で詳しく説明していますので、読んでみてください。

 

 

繰り返しゲームについて

 

カルテルから抜け出そうと考える寡占企業が少ないのは「繰り返しゲーム」だからなのです。

 

囚人のジレンマの場合は「一度きりのゲーム」でした。

 

一度しかないために、目の前の利益に目がとられてしまうのです。

 

ですが、繰り返しゲームであれば、これから何回も繰り返すことで、一度の利益は少ないが、それが安定的に利益が手に入ります。

その結果、一時の利益よりも大きく利益をあげることができるのです。

 

 

もしも、一度抜けてしまったら、カルテルに再び加わるのは難しく、これから利益が全くあがらないようになってしまうかもしれません。

 

これを「トリガー戦略(しっぺ返し戦略)」と呼ばれ、相手が協力的であれば協力し、一度非協力と裏切る行動をとった相手に対しては、その相手の損を被るように、自分たちも非協力を選択し続けるという戦略を起こします。

 

 

上記のように、一回だけという短期的な期間であれば、非協力がナッシュ均衡になりやすいです。

 

ですが、無限回であれば、協力がナッシュ均衡になりやすい傾向があります。

 

このことから、抜け出す誘惑はあるものの、カルテルに協力を選択をすることで長期的な利益が得られるので、最適戦略といえるのです。

 
 

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