経済学は国問わず、多くの学者が研究や論文を発表されています。
それほどに経済とは関心の高い学問でもあるということがいえるでしょう。
そんな経済学では様々な経済学者の名前や理論を目にするかと思います。
そんな多くの経済学者の中でも、有名なのが「ジョン・メイナード・ケインズ」という経済学者の理論です。
本記事では、そんなケインズの理論とケインズ経済学について説明していこうと思います。
ケインズの理論と経済学について
1936年に出版された「雇用、利子および貨幣の一般理論」は世界に大変影響を与えたのでした。
そんなケインズの言葉に下記のようなものがあります。
資本主義が発展していくと、一方が富の蓄積があり、もう一方が貧困の蓄積がある
資本主義が恐慌を生み出す。
不況の中の労働者が貧困のどん底に落とされる。
そうした労働者の怒りが蓄積され、やがて革命を起こされる。
資本主義のような個々の利益を追求する経済体系は争いを生むだけだとケインズ氏は考えていたというのです。
ケインズは不況をなんとか食い止め、極端の恐慌になることを抑えることが政策的に可能であると言っていました。
そんなケインズの理論が広まり、非常に極端な恐慌が起こりにくくなっていったとされています。
それにより、ケインズの理論は世界を大きく変えたのではないかとも言われています。
ケインズ経済学以前の「均衡財政」とは?
まずは、ケインズ経済学が知れ渡る以前の経済の常識だった”均衡財政”という経済体系について説明していきます。
均衡財政とは、政府の支出が政府の収入に依存する財政のことをいいます。
例えば、不景気時に企業の売り上げが下がり、従業員の収入も減ってしまうという状況だったとします。
その際、国民が物を買う時の消費税や、お給料に対して課せられる所得税などが減ります。
これは政府に納められる税金の量も減ることになります。
そうなった場合、納められる税金が少ないことから、政府の支出も減ります。
このように、「均衡財政」とは、政府の収入に見合った支出を行う財政だということです。
こういった均衡財政で、不景気時にそれが繰り返され、どんどん不景気になって、一向に景気が良くならないと考えられます。
この状態が続いてしまうと、いつか景気が極端に悪くなった状態を「恐慌」といい、経済が恐慌となり、あまりにも深刻になってしまうと「革命」が起きてしまうのです。
均衡財政は「国の景気が悪くなる → 国の支出が減る → 国の景気が悪くなる…」と言った負のスパイラルを生み、それを断ち切ることが難しい経済体制だということです。
そんな均衡財政が経済の常識になっていたのにも関わらず、ケインズの理論が受け入れられたわけです。
次にそのケインズの理論であるケインズ経済学の説明をしたいと思います。
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ケインズ経済学とは
ケインズの考え方は、景気が悪くなったら、仕事を増やせば良いという考え方です。
ケインズの経済政策は、国が借金をして、資金を集め、その資金を使って国が積極的に「公共事業」を行うということです。
これによって、景気が良くなり、税収が増えたとき、その借金を返すといったものです。
このことから、ケインズ経済学は不況のときに有効であるとされています。
では、その「公共事業」を行うことで、なぜ国の景気が良くなるのかについて説明していきます。
公共事業を積極的に行われることで雇用が生まれます。
例えば、橋や道路の舗装などが増えれば、建設会社は作業員が必要になりますから、人を積極的に雇おうと考えると思います。
また、仕事の案件が増えるわけですから、建設会社の売り上げが上がり、従業員のお給料も増えます。
これは建設会社だけにとどまらず、その建設に使われる材料や他の業種の従業員といった様々な企業が関わりますので、そのほかの企業にも良い影響を与えることができます。
これにより、企業に課せられる法人税や会社員の給与に課せられる所得税が大きくなります。
また、お給料が増えたことで、国民の消費行動にも影響を与え、購買意欲を高めることができますから、消費税も大きくなります。
こういった、政府の税収が増え、それを使って借金である国債を返せるとケインズは考えたのです。
ケインズが受け入れられた背景
ケインズ経済学が分かったところで、ケインズの理論が受け入れられたきっかけについてお話ししておきましょう。
ケインズ経済学は1930年代の「世界恐慌」を背景にケインズが考えた理論により生まれた経済学です。
「世界恐慌」とはニューヨーク市場の株価が大暴落したことで、世界的に深刻な長期不況に陥った恐慌を言います。
その際にアメリカが景気回復を目的として活用したのが、ケインズの理論なのです。
上記でもご説明しましたが、公共事業を積極的に取り入れるといった政策を行ったのわけです。
それが、中学校で学ぶ有名な「ニューデール政策」と呼ばれる政策でした。
このニューディール政策では、アメリカにあるテネシー川と呼ばれる川にダムを造る公共事業を行いました。
このように、失業者があふれる当時にダムを造るといった大規模な事業により、大きな雇用を生んだのです。
これにより、不景気が回復したと言われています。
この成功事例により、世界中でケインズの理論が用いられるようになったと言われています。
資本主義経済だと「完全雇用」が実現できない
資本主義経済では「完全雇用」、つまり「非自発的失業者」を出さない状態にできないと言われています。
私たちの生活でよくみられる「自発的失業」とは、現在の賃金では働きたくないと考え、就業を拒否することにより生じる失業のことです。
それに対し、「非自発的失業」とは、働く能力、意欲があるにもかかわらず、雇用の機会がないために生じる失業です。
この非自発的失業は不景気により、企業の売り上げが芳しくない状況から、従業員の給料を下げるだけではなく、従業員を雇わないといった状況になってしまうことで増加します。
ケインズは「非自発的失業」という言葉を提唱しました。
当時はそういった方々がたくさんいて、政府はそういった働きたくても働けない人たちに目を向け、積極的に政策を行っていかなければ国の景気は良くならないと考えたのです。
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公共事業のほかに景気を良くする方法
ケインズの理論では公共事業を増やすことで景気が良くなるという理論が有名ですが、それ以外にも有名な理論があります。
ケインズは国民の「消費性向」を高めなければ、景気は良くならないとも言っています。
「消費性向」とは国民が所得の中で消費に回すお金の割合のことを指します。
日本の皆さんは「貯金が好き、必要だ」と考えている方が多いかと思います。
これは日本人は所得の中で貯蓄に回す割合、つまり「貯蓄性向」が高いということです。
貯金をしておけば、いつでもモノを買うことができるので、安心だよねといったお金に対して「貨幣愛」が強い方々が多いと考えられています。
このような国民が貯金を好み、消費を控える状況では景気が一向に良くならないとケインズは言っているのです。
そこでケインズが注目したのが「利子率」と「利潤率」です。
銀行に預けてお金が増えることを「利子率」と考え、株式などで事業に投資して利潤を得るのが「利潤率」と考えます。
この「利子率」と「利潤率」のバランスによって、国民が手元に残すよりも、投資したほうがいいよねと考えさせる状況をつくり出すことが重要だといっています。
これにより、個人でお金の流れが滞っている状況を、個人のお金を使って国の企業が大きくなって結果的に景気が良くなるよねというものです。
それを実現させるためには、利子率のほうが利潤率よりも、高くする必要があります。
また、利潤率がとても低い状態でも、あえて意図的に利子率を下げて利潤率を高くしておくことが有効だと言っています。
このように国民のお金の使い方にアプローチをかけることが国の景気を良くすることに繋がると考え、その国民のお金の使い道を国が誘導する必要があるというのがケインズの理論でもあるのです。
美人投票と株式投資
ケインズの有名な理論として「美人投票」と株式投資の関係性についての理論もあります。
19世紀イギリスなどで実際に行われた新聞投票で、複数の女性の中から誰が一番美人かを投票するという「美人投票」が行わていました。
そして、投票で1位になった女性に投票した者たちに賞金が与えられるというものでした。
ケインズは、株式投資はこの「美人投票」に例えることができるとしています。
ケインズは株式で大きな利益を得るには、自分が値上がりすると思う銘柄ではなく、市場参加者が最も好むであろう銘柄を深読みして選ぶべきだという考え方のことです。
これはいってみたら、自分が考える将来性のある企業に投資するのではなく、市場の投資家たちの考えをくみ取って投資を行うことで株式投資で大きな富を築けるとケインズは言っているんですね。
これは現在の収益を挙げている凄腕の株式トレーダーの考え方そのものだといえると思います。
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コメント
非常に分かり易く助かりました。ありがとうございました。
こちらこそ、読んでいただきありがとうございました。
そう感じて頂けたこと、サイトを運営する者として、やりがいを感じられた瞬間であり、とても嬉しく思います!
これからも、読んでいただいた方にわかりやすく伝えられるように頑張っていきたいと思います!
本当にうれしく思います。
コメントしていただき、ありがとうございました。