多くの人が普段から誰かと比較しながら生きています。
現在の自分に満足していなかったり、途轍もなく不安になったりすると、その現状から抜け出す努力よりも先に誰かと比較して安心したくなるのです。
また、自分より上の立場の人と比較して、その比較対象になろうという活力を引き出しモチベーションを高めようとします。
これはそれぞれ自分の立場を認識することで得られるというものです。
こういった誰もが自分の立場を理解したり、物事を決める判断の基準とするということです。
これを”社会的比較理論”と言います。
そして、その社会的比較理論には「上方比較」と「下方比較」があります。
これらは、それぞれによって、意味合いと得られるモノが変わってきます。
本記事では社会的比較理論のそれぞれの比較の意味と、理想的な比較対象についてご説明していきます。
社会的比較理論の「下方比較」とは
社会的比較理論の「下方比較」とは、自分より不幸であったり、優れていない集団と自分を比較するということです。
これにより、自分より優れていない人を見て、「自分はこの人たちよりマシだな」と安心することができるのです。
こういったことから分かるように、「下方比較」をする人は、自分の自信のない気持ちを落ち着かせようと低い立場の人を見て、安心を得る”向上心の低いタイプ”といえます。
例えば、会社で同僚が上司に怒られているところを見かけたとします。
そういった場合、「下方比較」をする人は、それをみて「上司に怒られているアイツは自分よりも劣っている」と感じるということです。
怒られている細かい内容は分からないのにも拘わらず、それでも「怒られている以上、あの人はダメなヤツなんだ」と考えてしまうわけです。
こういった考えは誰にでも当てはまるような気がします。
自分が落ち込んでいたり、自信喪失をしているときなんかは、よく感じてしまいものですよね。
ですが、そういった考え方をし続けることは、とても危険だといえます。
なぜなら、自分が能力的に劣っている状態を維持できてしまうからです。
世界中を見れば、探せば自分よりも劣っている人もいるはずです。
それこそ、身近な人でさえ、そういった考え方ができるような立場にいられてしまいます。
そんな環境下であれば、自分の能力を上げる労力よりも、自分より下の人間を探したほうが楽ですからね。
そうなれば「自分はできないヤツだ」といったネガティブな考えから、「できるように努力しよう」という気持ちになれないわけです。
社会的比較理論の「上方比較」とは
社会的比較理論の「上方比較」とは、自分より実力や実績を上げている人たちと比較するということです。
これにより、「あの人たちのようになりたい、このままじゃいけない」と高いモチベーションや強い達成の思いなどの動機付けができるのです。
こういったことから分かるように、自分を高めようという向上心が強く、もしくは自分に自信があるタイプだといえます。
例えば、会社やプライベートで自分よりも高い成果を挙げ、生活を充実させた方がいるとします。
周囲から尊敬され、その人の働きに誰もが期待しているとします。
そんな自分よりも優れている人を見て、「あの人みたいになりたい、あの人に負けてられない」といった感情になるのが「上方比較」です。
こういった考え方を持つことができる人は、自分を成長させ、多くの成果を成し遂げることが可能だといえます。
ですが、この考え方にもリスクが伴います。
というのも、理想を高く持ちすぎれば、それだけ失敗して自信を失う可能性も高いからです。
自信や向上心が高いに越したことはありませんが、自信を失って立ち直れず、モチベーションが保てなくなってしまうのも問題です。
こういったことを踏まえたうえで、目標設定を行わなければならないということです。
理想的な比較の仕方
上記で社会的比較理論の「上方比較」と「下方比較」の説明をしました。
ごちらともメリットはあることはお分かりいただけたかと思います。
「下方比較」は現在の自分の立場や能力が変わることはありませんが、追い込まれている、精神的に病んでしまいそうな状況で身動きが取れなくなってしまうときに有効だといえます。
時間や労力を必要としないため、自分より下の立場の人間を見つけて、精神を安定させることができます。
仕事で失敗をしてどうしようもない状況であれば、「自分は働いてお金を稼いでいるだけマシだよな」といった安心できるのです。
ですが、その反面、それがクセになると、いつまで経っても同じ状況で、下の人間を探し続けて安心し続けるといったどうしようもない状態になってしまいます。
また、「上方比較」でも、優れた人と比較することで、高い目標を設定し続けられ、それだけ向上心やモチベーションを保つことが可能ですよね。
ですが、それでも、比較対象が高すぎたり、自分は成果がだせずに、比較対象が成果を挙げ続けた場合には、自信喪失に繋がるといったリスクもあります。
このように下方比較よりも、上方比較のほうが良いということはお分かりいただけるかと思います。
ですが、どちらともメリットがあるもののリスクがつきまとうため、理想的な比較とは言えないのが実際のところです。
では、どういった比較が良いかというと”自分と同レベルの立場の人との比較”が理想であるといえます。
同じ立場と比較することで、上方比較のように常に高いレベル実力を身につけるといった強い意志はないものの、「ライバル」という関係性が生まれることで切磋琢磨しながら競い合うことができますよね。
これなら、身近に感じられることから、成長できないことで安心できないので、常に相手を意識しながら成長意欲を燃やしながら取り組むことができます。
また、相手の失敗を見て、見下すのではなく、「自分も同じ失敗をしないようにしないと」といった視点でみることができます。
こういったように、自分との比較がしづらい対等や同等である相手と比較するようにすると良いかと思います。
番外編:恋愛を始められない状態とは
よく「恋愛はしたいけど、好きな人ができない…」と悩んでいる方がいらっしゃいます。
それこそ、自分の理想としている相手が周囲にいないなんていう状況から起きることもあります。
そういう方には、自分に対しての”自己評価が高い”というという傾向があるといえます。
学歴が高かったり、外見が良ければ、それだけ自分に見合った相手と付き合いたいと望むものですよね。
それに加えて、現代のように情報過多な社会で、誰でも情報を手軽に手に入れられる状態なので、さらに理想が高まっていくのです。
その結果、国立社会保障・人間問題研究所が行った調査によると、2015年のデータでは未婚の男性の7割、女性の6割が「異性の交際相手がいない」という結果となっています。(人間問題研究所の調査結果PDF)
こういった交際相手がいない人がだんだんと増えてきています。
これはどういう状態かというと、例えば、テレビや雑誌に出演している異性の芸能人に魅力を感じているとします。
そうした場合、「私はこの芸能人の人に近い人と付き合いたいッ!」と強く望むとします。
そして、自分に見合った相手だと認識したとします。
そうなれば、芸能人と周囲の異性を比較して、「自分と釣り合わないな…」と感じても不思議ではありません。
つまり、自分の自己評価の高さに加えて、テレビやネットを介して、人を見る目が肥えてしまい、恋愛対象を見つけることができなくなってしまうということですね。
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