あなたも経験があるかと思いますが、人は「行動」と「考え」が矛盾してしまうことがあります。
そして、なぜこんな行動をしてしまったんだろうと不快感を感じられた方もいらっしゃるかと思います。
その時に、あなたはその行動を正当化するために考え方を変えたことはありませんか?
実はこの状況で生じた不快感を解消として、無意識に行動に対しての解釈を変えてしまうことがあるんです。
これに関連する心理的傾向を”認知的不協和理論”で説明することができます。
本記事では、そんな「認知的不協和理論とは何か」、それを結論づけた「実験と実験結果から使えるテクニック」をご紹介したいと思います。
では、まず初めに「認知的不協和理論とは何か」を説明していきます。
認知的不協和理論とは
認知的不協和理論とは、人の心の中で生じた矛盾を解消しようとする心理的作用のことを言います。
人は「自分の考えと行動が矛盾」していることに気づくと不快感を抱きます。
そして、それを解消しようと考え方や行動でその矛盾を解消しようとするのです。
この認知的不協和はアメリカの心理学者「レオン・フェスティンガー」によって提唱されました。
レオンが行った不協和解消の原理について実験があります。
『不協和解消の原理の実験』
この実験の被験者である学生たちに、1人12個の糸巻きを容器に並べて取り出すといった作業を30分間、それを元に戻す作業で30分間をやらせました。
作業後に学生たちに、その作業の感想を聞くと「退屈な作業だった」という意見が多数ありました。
作業が終わった学生に、次にこの作業に参加する学生に「面白かった」と伝えるように指示をだしました。
その嘘の評価を伝えるにあたり、報酬として「1ドルのグループ」と「20ドルのグループ」に分けました。
そして、次の参加者に被験者が「面白かった」と伝えてもらった後、改めて実験担当者が作業の評価を尋ねました。
その結果、20ドルのグループは「つまらない」といった低い評価をしたのに対して、1ドルのグループは「面白かった」と高く評価をしたのでした。
元々は作業は「退屈でつまらない」といった被験者らが作業を面白いと答えたのはなぜなのでしょうか?
これは、作業の報酬が1ドルという「退屈でつまらない作業で時間を無駄にしてしまった」という行動と「なぜこんなつまらない作業をしてしまったんだ」という考えから、行動と考えに矛盾が生じたことで、それらを正当化するために考え方を改めたということが推測できます。
報酬が20ドルのグループは分相応の報酬をもらえたことで、「お金のために作業したんだ」と、その退屈な作業を正当化することができました。
そのため、退屈な作業をつまらないものとして受け入れることができたのです。
一方、報酬が1ドルのグループの被験者は、考えを変えなければ、「無意味な作業をした」という行動と「つまらなかった」という考えで、不快感しか残りません。
その不快感を解消すべく、自分の考えである「つまらなかった」を「面白い部分もあったな」といった解釈をしたと考えられるのです。
やってしまった行動は変えることはできませんが、考え方は自分次第で変えることができます。
つまり、人は
”過去の行動は変えられないため、解釈や考え方をを変え、その行動を正当化する”
といった心理的傾向があるといえるのです。
不快感から逃れるために、人は無意識に考え方を変え、正当化をしようとすることが結論付けられたのです。
身近な認知的不協和理論
認知的不協和理論の例えで最も多いテーマで説明すると「タバコ」です。
タバコはあなたもご存じのとおり、肺がんのリスクなどがあることから体に悪いことは理解されていますよね。
ですが、それでも喫煙者はたくさんいらっしゃいます。
そこで、「バランスのとれた食生活や適度な運動をしている」といった自称「健康意識の高い」喫煙者がいたとします。
そんな相手に「健康を意識しているのにタバコを吸ってるってどういうこと?」と指摘したとします。
この時に、その喫煙者はその指摘から矛盾が生じていることに気づきます。
この瞬間、その相手の中で行動と考えが矛盾していることで、気持ちが悪い状態になります。
それを解消するために、「タバコは体に良いんだ」と考えることで、この不快感を解消しようとするわけです。
実際に、こういうやり取りをすると、「ボケ防止になる」といった身体面のメリットや「肺がんよりも交通事故のほうが死亡率は高い」といったタバコ以上の危険性の高い事例を挙げてくるような方がいらっしゃいます。
このようなな考えを持つことで、タバコの危険性は消えることはないですが、それでも喫煙という行動を正当化しようとするのです。
このように、自分の行動の辻褄が合わない行動を「タバコは体に悪い」から「タバコは体に良い」に変えることで矛盾を解消しようとしていると言えるでしょう。
認知的不協和で恋愛に発展することも!?
好意というのは不思議なもので、一種の錯覚によって生じることが多くあるのです。
その錯覚の1つに「認知的不協和」も当てはまります。
認知的不協和の実験でこんな面白いモノもあります。
アメリカの心理学者「ジェッカー」と「ランディー」が「助けた相手に対してどのような気持ちを抱くのか」を調査を目的とした実験があります。
被験者に課題を出し、「正解するたびに報酬」を与えていきます。
報酬は最終的に「60セント」と「3ドル」を受け取るようになっています。
そして、そのあとに
- 「研究資金が足りないので、報酬の金額(60セント、または3ドル)を貸してください」と実験者が頼む
- 上記と同様の頼みを実験者以外の第三者が頼む
- お金を渡したままにしておく
の3つのパターンで実験を終わらせました。
実験後、被験者に「実験者の好感度を測る質問を織り交ぜた実験に関してのアンケート」に答えてもらいました。
その結果、1の「実験者が直接お金を貸してもらう」パターンで実験を終えた被験者が最も実験者に対して好感を抱いたという結果となりました。
それに加えて、60セント貸した被験者よりも、3ドル貸した被験者のほうが高い好感を感じていることも分かりました。
これは被験者は人の頼みごとをきくと不快に思うどころか、好感を持ってもらえ、その負担が大きいほど、その度合いが増したということになります。
この実験結果も認知的不協和理論で説明することができます。
基本的に会ったばかりの人にお金を貸すなんていう行動は、一般の人の生活ではありえないことですよね。
報酬とはいえ、貸すなんてことはできないですよね。
ですが、普段しないことをしてという結果となってしまいました。
ここで、「報酬がほしい」という考えと「報酬を渡してしまった」という行動で矛盾が生じます。
この矛盾を解消するために、無意識に「実験者に好感を持てたから」といった考えを変えることで、その行動と考えを一致させたということが言えるのです。
このように助けた理由でさえ、行動と考えの矛盾を不快感を解消しようという心理的傾向があるということの証明であるといえるでしょう。
これは普段の生活でもいえると考えられます。
会社で困っている人がいて、自分の仕事が片付かないというリスクを負って、その人を助ければ「この人に好意を持っていたから助けたんだ」と認知的不協和により、異性であれば恋愛に発展するかもしれません。
ですので、認知的不協和の実験の結果から分かるように、気になる異性がいる場合は、「その相手を頼る」といった行動で、相手との関係が進展するかもしれないということです。
気になる相手がいる方はぜひ、認知的不協和の理論を理解し、恋愛テクニックとして活用してみてください。
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